母は洋裁のプロでした。
お客様と相談しながらデザインを決め、生地を選び、型紙を描き、仮縫いをして…
スーツ、ワンピース、ジャケット、コートといった服を作り上げ、仕立て代を頂く仕事を母はしていました。
もう15年ほど前になりますが、母が私に作ってくれた最後の服を今日は紹介します。
ツイードのジャケット

ツイードのジャケットです。ちょっとした式へ出席するときに着るための服として母が作ってくれたものでした。
おそろいのスカートもついたスーツだったのですが、サイズが合わなくなりスカートの方は処分してしまいました。
当時私の体形に本当にぴったりで、着ごこちがよかったです。
体形が変わってしまったため、このジャケットももうずっと着ていません。

私は肩幅が広くて市販の服は合わないことが多いんですが、このジャケットは私の肩幅にぴったり合っています。
ウエストシェイプした当時のスタイルですね。

フリンジと黒いテープで縁取り。

肩、そでつけ部分。

ポケットにもフリンジ。

フリンジ、ボタンホール。力ボタン。
裏の手仕事

ジャケットには裏地がついているんですが、私が自分も洋裁をかじるようになって初めて、この服を作るのにはものすごく手間がかかっていることがわかりました。

細かい針目のまつり縫い。

見返しのすそ部分。

脇は中綴じしているようですが、そでつけ部分はぐるっと一周まつりぬい、そしてわきの部分は星止めもしてあります。
表に一切響かず、シルエットをくずさず、体の動きを邪魔することなく、裏のどこを見てもきれいに裏地がついています。
「裏だし見えないからいいや」「ちょっとゆがんでるけど着たらわからないだろうからいいや」と妥協しまくりの私の作る服とはものが違います。
ちなみに母は独学で洋裁を学んだと言っていました。そして私が小学生だった頃に、自己流から学びなおしたいといって、文化服装学院だったかと思いますが、洋裁の通信講座を受講していました。
母が作ってくれた服
小さいころは母が作ってくれた服をよく着ていましたが、少し大きくなると着なくなりました。
母が作る服は、カッチリしすぎて着るのが気恥ずかしく思えました。
社会人になり、職場に着て行く服が必要になると、また母に時々服を作ってもらうようになりました。コートやジャケット等、買うと高いような服を母に作ってもらえるのはありがたかったです。
でもそれは「洋服代が浮いてラッキー」というぐらいの気持ちでした。
母に服を作ってもらっていたにも関わらず、手作りの服よりも本当は買った服の方がいいとずっと思っていたんです。おろかものですね…
年をとり、自分も服を作るようになって初めて、母が作ってくれた服のありがたさがやっとわかりかけてきました。
よくあるデザインのツイードのジャケットですが、当時の私の体形にぴったり合って、着心地がよかったこの服は、どんなお店でも買えない、世界でたった一枚の特別な服です。
洋裁の目標
洋裁の目標は人それぞれだと思います。
簡単に作れるシンプルな服を作りたい人…
服代の節約のために自作したいという人…
お店で売ってないような個性的な服を作りたいという人…
服を作って売れるようになりたい、という方もいるでしょう。
私は自分や家族が暮らすのに必要な普通の服を作りたいです。
普段着、通勤着、特別な時に着る服……
ちょっといい布を使い、体形に合って、丁寧な仕立ての着心地のいい服を作れるようになりたい。
それが私の目標です。
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